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2025/06/19 06:04 |
幼き記憶
「ばーちゃん、ばーちゃん」
 ある日の昼下がりのこと、家の中をぱたぱたとあわただしい足音が響き渡る。
「どうしたんだい、アッシュ」
 祖母はそれまで編み物をしていた手を一旦止め、傍にやってきた孫の話に耳を傾ける。
「あのね、ボクおとこのこだよね?」
 孫からの妙な質問に、祖母は目を丸くした。
「当たり前じゃないかい」
 しかし、直後にふと感づいた。
「友達に何か言われたのかい?」
 その言葉に、アッシュは質問をした理由を話した。
 いわく、友達の一人から男の子が料理や裁縫を習うのはおかしいと言われたそうで。
 アッシュは日頃から祖母と一緒に家事を手伝うのが習慣なのだが、どうやらそれを笑われてしまったらしい。
「別におかしいことじゃないさね」
 祖母はそう言うと、孫をひざの上に抱きかかえた。
「家事は一通り出来て損はしないさ、今からやっておけば将来きっと役に立つさね」
 アッシュの両親は、ほとんど自宅にいない。薬草採取という名目の元、大陸中を駆け回っているためだ。
 そのため、家業の薬屋も弟子達にまかっせきりだったりする。
「だから、何にも心配することはないさね」
 アッシュが積極的に祖母を手伝うのも、彼なりの優しさなのだと彼女は理解している。
 だから、そんなことで孫の心に傷を残したくはないのだ。
「ほんと?」
 その言葉に、アッシュはほっとしたような表情を見せた。友達に笑われてショックだったからだろう。
「ほんとさ」
 と、祖母もにこやかな表情で孫の頭を撫でてやった。


それから時は流れ。
成長したアッシュは現在居候先の家で、毎日家事をこなしている。

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2008/06/24 14:25 | Comments(0) | TrackBack() | 村月ささら

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