いつだって物が雑多に置いてある場所。
それが、エリスが抱くアッシュの部屋に対する感想だ。
仕事に使う薬品や道具はもちろんのこと、様々な種類の本やその他何に使うのか分からない物まで、とにかく物で溢れている。
しかし決して乱雑に置かれているわけでもなく、ある程度は整理されている。
そんなアッシュの部屋の真ん中を、なぜか大量の布が占拠している。
「……何に使うのだ?」
借りていた本を片手に、エリスは布とにらめっこしていたアッシュに尋ねた。
「ああ、そろそろ服を新調しようかと思って」
家事の得意なアッシュは、服も自作できる腕前を持つ。現に、エリスの服もほとんどがアッシュのお手製だ。
「季節の変わり目だしね、ちょうどいいと思ってさ」
「ふむ……」
エリスは本を元の戸棚に戻すと、横目で布を選定中のアッシュを見やる。
何やら真剣そうに作業しているので邪魔をしてもいけないと思い、そそくさと部屋を後にしようとしたのだが。
「あ、エリスはどれがいい?」
突然話題を振られた。
見れば、エリスの目の前には何枚かの布が広げられている。どうやら、この中から好みの物を選べということらしい。
「………」
エリスは困った。服や色に対しての好みなど、これまで考えたことはほとんどない。
特に服選びに関しては苦労してたため、着れればいいという考えがある。好みなど考える余裕はなかったのだ。
なので結局、
「……まかせる」
そう言って、エリスはそのまま部屋を後にした。
つまりそれは、自分のセンスが問われているということか。
アッシュはエリスの行動をそう解釈した上で作業に取り掛かった。
エリスはアッシュの着せ替え人形でいいと思う。
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