忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/06/07 12:11 |
もうしょ

「ぅへぇ……」
 暑い……と言うより熱い午後の始まりに、そんな悲鳴が漏れる。彼女自慢のブロンドの髪だけは変わらず太陽のような輝きを保っていたが、持ち主であるリディア自身がぐうの音も出ていない。
「暑い!」
 大声。それに対して「よけい暑苦しい」と苦情の視線が飛んでくる。
「コートに長ズボンで何を言ってるんだ?」
「タイチョー……筋肉が暑苦しいので視界に入らないでください」
「……すまんな」
 と、タイチョーと呼ばれた同居者はリディアを蹴飛ばし、視界の外に転がしていく。
「いえいえ……そうだ、マクラウド君のところに遊びに行きましょう! きっとユエちゃんが快適に過ごせるように何か狂った壮大な対策が……」
「……今、私が机に向かって何をしてるように見える?」
 机の上には書類と辞書の山が五つほど。正面には羊皮紙に書かれた証書が置かれている。
「暑中見舞い?」
「なるほどな。それならば行けそうだ」
「ですよねー」
「私は仕事が残ってる、一人で行って来い」
「ですよねー……」
 暑さのせいで蝉は休業中。たまに弱々しく風鈴が鳴る音と、紙をめくる音が静かに響く。
「ユエのところには行かないのか?」
「うん、外、暑いから涼しくなってから行く」
 ぐったりと床に転がるリディアを見かねてか、タイチョーは団扇を両手に構え、風を送る。

 
パタパタパタパタ……。

「美少女には汗は似合わないと思います」
「少女は少し図々しいぞ」


 パタパタパタパタ……。

「タイチョー、暑くないんですか?」
「心頭滅却すれば火もまた凉し、という事だろう」

 パタパタパタパタ……。

「……すー……すー」
「まったく」
 三角帽子を取り、枕を頭の下へ。氷嚢をおでこに、額の汗を拭く。
 たまに弱々しく風鈴が、時々紙の刷れる音、小さな寝息がすーすーと。
「まったく、暑いな」
 肘に付いた資料をはがし、ボソリと苦笑した。

PR

2008/07/31 16:29 | Comments(0) | TrackBack() | 天測飛行

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<ドラ娘の食事 | HOME | ドラ娘と祭>>
忍者ブログ[PR]